「豊臣家が滅亡した大坂の陣で、毛利輝元は豊臣方に味方する行動に出た。」といえば、「そんなことをすれば、外様の毛利藩はすぐとりつぶされる。」というのが歴史ファンならだれでも思うことだ。
しかし、輝元は、毛利元就(もとなり)の血を引く重臣内藤元盛(ないとうもともり)を「佐野道可」の名で藩を離れた「牢人(ろうにん)」として大坂城に送り込む。当然、関ヶ原の戦い以降毛利藩の存続のために藩と幕府の間を奔走した重臣たちは反対したが無視した形だ。
予想通り、このことは徳川家康(とくがわいえやす)の知るところとなる。大坂城落城の際道可は逃走すると、家康は輝元に道可を探し引き渡すように命じる。毛利藩とりつぶしの危機である。輝元は京都に潜んでいた道可の首級(しるし)を差し出し藩に災いが及ぶことを避けようとする。
輝元は、豊臣秀吉の時代「五大老」として家康とは肩を並べていたので、豊臣家への忠誠心から「意地」をみせたところだ。しかし、意地の代償は首級一つでは済まなかった。輝元は、藩のとりつぶしをいまさらながら恐れ、道可の二人の息子、内藤元珍(ないとうもとよし)と粟屋元豊(あわやもととよ)を自刃させている。豊臣の血が絶えてよしとする家康にとって、二人の死は無意味であった。元就から数えて三代目、「お坊ちゃんの意地」の結果である。道可(元盛)と元珍の墓は、宇部市舟木にある瑞松庵(ずいしょうあん)にある。
2019
08Nov