すきとおるような桜の花びらの描写に描く人の丁寧さやセンスのよさを感じる。絵師の名は羽様西崖(文化八年(1811年)~明治十一年(1878年))。幕末から明治にかけて萩を中心に活躍した人で、若いころ写生を学んだのをはじめ、小田海僊(おだかいせん)につき文人画を学び、山水画・人物画、そして花鳥画と、あらゆる分野の絵をこなしている。吉田松陰の肖像画で有名な勤王の志士松浦松洞(まうつらしょうどう)は弟子である。
特に、桜の絵は得意で、この写生を見れば、単なる写生というより、絵から桜の花の香りが伝わってくるような品位を感じることができるだろう。「薩摩緋(さつまひ)」や「伊勢(いせ)」の字でわかるように、全国の有名な桜が描かれている。