馬に乗っている武将は源義家、「八幡太郎」の名で知られる源氏の名将である。源頼朝や足利尊氏のご先祖様である。義家が、東北の清原氏の内紛に介入し兵を進めているときに、清原軍の兵が草むらにひそんでいるのを空の雁の列の乱れから察知し馬と止める様子を描いたものである。その後、義家は清原軍に勝利し、東北に勢力をはることになる。
描いたのは、萩藩にいた狩野派の絵師狩野伊俊(天明八年(1788年)~享和三年(1803年))である。伊俊の名は、彼が江戸の狩野伊川の下で修業をしたとき、彼の才能を見抜いた伊川が、一字を与え「伊俊」を名のらせた。それだけ才能があったことになるが、十五歳で亡くなっている。ということは、この絵は、現代で言えば中学生時代ごろの作品ということになる。
なお、乱雁の話を義家に教えたのは、毛利家の祖先にあたる
大江匡房という人で、源氏の名将を勝利に導いた話は毛利家にとっても鼻の高いことではないかと思われる。