萩が生んだ文化勲章受章画家、松林桂月(明治九年(1876年)~昭和三十八年(1963年))の代表作である。かつてニューヨークで開かれた万国博覧会で好評を博したもので、現在は東京国立近代美術館に所蔵されている。 馬屋原家に伝わるものは、好評につき注文に応じて桂月が描いたものの一つである。ちまたでは、この朧月夜に浮かぶ桜の世界を描いた名品を「夜桜」と呼んでいる。世界に通用する夜桜は、琳派の影響を受けた桂月が輪郭線を用いないで表現する「たらしこみ」と呼ばれる技法で描いた水墨画である。桂月は、この技法を用いることで自宅近くの桜のスケッチを情感ただよう夜桜の世界に仕上げている。
なお、「春宵花影」は、「春宵一刻値千金」と夜桜の世界に遊ぶ世界を詠んだ中国の詩人蘇軾の「春夜」にヒントを得たものである。