花南理の庭美術館が所蔵する絵を二点ご紹介します。
まず、松林雪貞筆 「椿図」。
左下に伸びる蕾をつける一枝が、花の空間の広がりを楽しませてくれる。画家の名は、松林雪貞(まつばやしせってい)、萩が生んだ文化勲章受章画家松林桂月(けいげつ)の妻である。福島県白河の出身で、旧白河藩の家老の家に生まれる。明治の時代に東京に出て野口幽谷の門をたたき、同門の桂月と結婚する。当時は、明治維新をなした山口と敗者の白河、しかも家老の家の結婚はハードルが高かったことが想像できる。そんなハードルを越えて結ばれた二人。椿の花の花言葉は「謙虚な優美さ」。花言葉のように絵を上品な赤い空間に染める。桂月が夜桜を描いた「春宵花影(しゅんしょうかえい)」とともにお楽しみください。