浜崎は、歴史的なおもむきある建物と風情を残す「伝統的建造物群保存地区(でんとうてきけんぞうぶつぐんほぞんちく)」に指定されている。浜崎は、その歩みからわかるように商業や漁業をなりわいにした町で、現在残っている建物の中心は町屋である。浜崎の町屋の多くは、道路に平行して屋根の流れと入り口のある平入り切妻造(ひらいりきりづまづくり)だ。二階建てで、江戸時代から殿様を見下ろさないため二階が低くつくられているが、昭和にはいって高くつくられるようになった。
壁は、江戸時代柱が露出する真壁(まかべ)に造られていたが、明治になると、二階の外壁を漆喰(しっくい)で塗り柱が見えない大壁造(おおかべづくり)が普通となり、壁には虫籠窓(むしこまど)がつくられた。
店を構えお客をむかえるため、道路に沿った店先は開放的につくられている。家の表口にある大きな戸は跳ね上がるようになっており、戸のそばには跳ね上げ式の蔀戸(しとみど)をはめて戸締りする。大正ごろから大戸(おおと)の軽量化が図られ、上下を分割して上下を分割して、上部を跳ね上げ蔀戸、下部を取り外し式の大戸とした形式が普及するようになった。
浜崎の敷地は奥行きが浅いため、土蔵は通りに面して出入り口を開いて建てられるものが多いが、そんな町屋の一角に「乙丸菓子店」があり、家伝の工夫を凝らした和菓子を堪能できる。また、萩の蒲鉾づくりの伝統を受け継ぐ「三好蒲鉾店」も健在だ。
町屋に伝統があれば、行事にも文化の香りが残る。「お舟謡(おふなうた)」は県の「無形民俗文化財(むけいみんぞくぶんかざい)」になっている。 「お船謡」は、元々御船倉(おふなぐら)から藩主が乗船したり、新造船が進水したりするときに謡われたが、住吉神社の神幸祭(しんこうさい)の際山車(だし)である藩主の御座船(ござぶね)をかたどった「お船」の上で謡われるようになった。住吉まつりといえば「踊車(おどりぐるま)」である。まつりは地元浜崎を除く萩市中の二十八町のいくつかが交代で祭事を担当した。引き受けの町は、「踊車」を出した。現在では、住吉まつりは、毎年8月1日~3日に行われる「萩夏まつり」の最後を飾るイベントになっている。